如月 文実(きさらぎ ふみじつ)です。学生時代その1 3作品を投稿いたします。

 わが、四コマ物語ワールドにようこそ。作家としての人格、如月 文実(きさらぎ
 ふみじつ)です。
 今回の四コマ物語は、以下の3作品です。

学生時代
如月文実
 この4コマ物語は、そうですね、大人・社会人にステップアップする前の、学生を
主人公とした作品ですね。

はまぐり
 (1) サークルへの新入生勧誘も一段落し、天代の所属するサークルにも何人か
の新入生が入った。毎年恒例の、新入生歓迎コンパの幹事に、新2年生の天代が選ば
れた。みずからが責任者となり、物事を進めるのは、天代にとって初めてである。失
敗のないよう、先輩に気をつけるべきことを尋ねた後、まず、新入生を中心に、日時
の調整と人数の確認をする。日時が決まれば店に予約を入れる。店は、かねてからサ
ークルでよく使用している所で、キャンパスからも近く、値段も手頃である。運よく
席がとれた。サークルの部会で、日時と場所、それと待合せ場所の連絡と承認を受け
、コンパの準備は完了する。しかしこれで、幹事の仕事が終わったわけではない。当
日は待合せの場所に、十五分ほど前に来て、みんなを待つ。人数を確認し、全員そろ
えば店に行くのだが、いつものごとく、時間になってもまだ来ない人がいる。「日時
はちゃんと知らせた。まさか忘れたのでは…」。幹事として、一抹の不安を感じる。
と同時に、早く来て待っている者に対するひけめを感じ、またその反面、遅刻してく
る人に対する怒りがこみ上げる。待合せ時間に遅れること十五分、やっと全員がそろ
った。天代はホッとし、店までみんなを先導する。その間、予約に手違いがしょうじ
てはいないかとよけいな心配をしてしまう。店に着くと、予約の掲示板に、自分たち
のサークルの名があった。後は、適当に飲んで食べて会計をすませれば、それでお役
御免である。しかしまあ、ここまでくれば終わったも同然。天代はホッと胸をなぜお
ろした。今日のメニューは、はまぐりの鍋物。下宿生にとってはひさしぶりのごちそ
うであり、サークル員たちは目を輝かせた。
(2) だが、みなが席に着き始めた時、予想もつかないことが起こった。新入生の
関口 理穂が、みんなの皿から、はまぐりだけを取り、自分の所に集めたのである。
彼女がそうした行動に出たのは、一人占めして食べようというわけではない。実は、
彼女の両親は、自然保護団体の幹部で、その影響を受けた理穂は、目の前で生きてい
るものが殺されるのは、絶対許せないのであった。「今、目の前ではまぐりが殺され
ようとしている。助けてやらなければならない」。そんな衝動が、彼女にこんなこと
をさせたのであった。しかし、たまらないのは他のみんなである。座敷内には険悪な
雰囲気が漂う。「なんとかしなければ」と、幹事の天代が理穂の説得にかかろうとし
たその瞬間、ものすごい見幕で理穂を攻撃する者が現れた。同じ新入生で、天代と同
じ下宿に住む、足塚 文子であった。姉ごのカタキを取るためか、早くはまぐりを食
べたいためかはわからないが、文子は、ヒステリックに理穂を責める。しかし理穂は
動じない。ガンとしてはまぐりをガードする。すさまじい女の戦いに、同性ながら、
全員が緊張のおもむきで、それを見守った。
 (3) 「このままでは、せっかくの新入生歓迎会がだいなしになってしまう」。
危機感を持った天代は、二人の中に割って入り、とりあえず野菜から食べることにし
た。そして、はまぐりを奪還するために、一計を案じた。まず、下宿に電話し、友達
に、電話をして理穂を呼び出してもらうよう頼む。理穂を呼び出す電話がかかってき
た。理穂は席を立つ。そのすきに、天代が音頭を取り、すばやく、全てのはまぐりを
鍋にほうりこんだ。そして、理穂が帰って来た時には、なあなあでなんとかごまかそ
うと考えていた。
 (4) だが、世の中そう思い通りにはいかない。はまぐりの無残な姿を見た理穂
は、逆上し、二言三言、声をはりあげた後、さッサと店を出てしまった。座敷にはま
た険悪な雰囲気が残った。天代にもまた、幹事としての危機感がもどる。そして険悪
な雰囲気を一掃するため、天代は、思いっきり明るい声で、「さあみなさん、はまぐ
りの死を無駄にしちゃあいけないわよ」と音頭を取る。みんなはその一言に励まされ
、はまぐりの死を、有意義なものにするべく、一つ残らず、きれいにはまぐりを平ら
げた。こうして、天代の幹事としての役割は終わった。人はそれぞれ個別の価値観を
持っている。それを一つにまとめるのは、骨の折れる仕事である。

いたずら電話
 (1) 夜、正子のワンルームマンションの電話のベルが鳴った。受話器をとり、
「はい、柿本です」と応対する。すると、受話器の向こうから、「アヘアヘ」と、興
奮した、いやらしい男の声がきこえた。怖くなった正子は、すぐさま電話を切った。
正子の電話の応答の不自然さに、たまたまマンションに遊びに来ていた洋子が気づき
、「どうしたの」と正子に尋ねた。正子は事情を話した。すると、「いるのよねえ、
そういう男って」と、洋子と一緒に遊びに来ていた鮎子が、共感をこめて言った。「
だめよ正子、いたずら電話にああいう対応しちゃあ。かえって相手をつけあがらせる
だけよ」。今度は洋子がアドバイスをした。
 (2) 一人暮らしの女子大生には、へんな男から、いたずら電話がかかってくる
ことがある。その内容は、無言電話、エッチな話をしてくるヤツ、「アヘアヘ」と、
もろに興奮した声を聞かせてくるヤツなど、いろいろである。そして、相手の反応を
楽しむ。特に、相手が脅えたり泣いたりするのは快感であり、味をしめ、何度も何度
もしつこく電話をかけてくる。そして案の定、電話を切って3分後、またベルが鳴っ
た。「もし、へんな電話だったら、すぐあたしに受話器を貸して」。鮎子に励まされ
正子は受話器をとる。予想していたとおり、さっきと同じ電話だ。受話器はすぐさま
鮎子に渡り、「おまえ、なにやっとんじゃ。なめとったら、しばいたるぞ」と、大阪
弁で、大声で怒鳴りつけた。すると電話はすぐに切れ、それっきり電話のベルが鳴る
のは収まった。しかし、彼女たちのストレスは収まらなかった。
 (3) 夜、大作のアパートの電話のベルが鳴った。受話器をとり、「はい、浜波
です」と応対する。すると、受話器の向こうから、「だいちゃん、あたし」と、若い
女の、しかも艶っぽい声が聞こえてきた。びっくりした大作は、「あの、どなたです
か?」と聞き返した。すると今度は、別の女が、「あたし、あたしよ」と、これまた
艶っぽい声で話しかけてきた。なにがなんだかわからなくなった大作は、受話器の前
で「えっ」と絶句した。するとまた別の女が、「いやん、だいちゃん、あたしのこと
忘れちゃいや」と色っぽい声。そしてそのすぐ後、受話器の向こうから、遠く、ドッ
と笑い声が聞こえた。それで大作は、この電話がいたずら電話であることに気づいた
。「おまえ、誰や?」と大作が強い調子で言うと、電話はすぐに切れた。こうして、
3人の女子大生のストレスは、電話線を通じて大作に届けられた。
 (4) 大作は、思いもよらぬいたずら電話に激怒した。「今は一人だからいい。
でも、もし彼女が遊びに来ている時に、こんないたずら電話がかかっていたら…」。
そう考えると、いたずら電話をかけてきたヤツに、腹が立って腹が立って仕方なかっ
た。大作のストレスは収まらない。そこで大作は、受話器をとった。

思い込み
 これは、今となってはもう、パソコンが普及し始めての話だが。
 (1) 半年間ためたバイト代をはたいて、秀夫はついに情報機器一式をそろえた
。買ったのは、パソコン、ディスプレイ、プリンター、それにソフトである。何分、
貧乏学生ということで、機種にはあまりこだわらず、激安ショップで一番安上りな組
合せを店員にみつくろってもらった。秀夫は最初、パソコンやディスプレイは、線さ
えつなげばなんでも動くと思っていたが、店員の話によると、機種により、合う合わ
ないがあるらしい。購入した機器一式は、アパートに送ってもらうことにした。
 (2) 翌日、荷物が届いた。秀夫は、さっそくパソコンに詳しい友達に来てもら
い、組立てを手伝ってもらった。そしてその最中、秀夫はプリンターとセットになっ
て、ついているはずの、シートフィーダーがないことに気がついた。秀夫は最初、店
員の不注意で、シートフィーダーの抜け落ちた商品を送ってきたのだと思った。店員
の怠慢に秀夫はグチをこぼした。ところがである。グチを聞いた友達は、プリンター
には、シートフィーダーが、初めからセットになっている物と、別に買わなければな
らないものとがあることを教えた。秀夫はギョッとした。シートフィーダーは、プリ
ンターの付属品である。したがって、シートフィーダーはすべて、プリンターとセッ
トになって販売されていると思い込んでいた。だがそれは、事実を知ったうえでの考
えではなく、自分の頭の中だけの考えであった。「もう、なぜそれを早く教えてくれ
なかったんだよ」。秀夫は、軽い調子で友達を責めた。友達も軽い調子で、「それは
、きみがぼくに質問しなかったからだよ」と攻め返した。
 (3) 仕方がないので、二度手間ではあるが、秀夫はまた同じ店に行って、シー
トフィーダーを買うことにした。そして、店員に自分のプリンターに合う物で、一番
安いものを注文した。ところがである。プリンターの機種を聞いた店員は、その機種
に合うシートフィーダーはないことを知らせた。秀夫はギョッとした。どんなプリン
ターでも、その機種に合うシートフィーダーがあると思い込んでいた。だがそれは、
事実を知ったうえでの考えではなく、自分の頭の中だけの考えであった。「なぜ、プ
リンターを買う前に、それを説明してくれなかったのか」。秀夫は強い調子で店員を
せめた。店員は「すみません」と謝った。だが、それ以上のことはしなかった。
 (4) 結局、秀夫はプリンターを買い替えることにした。今度は買う前に、機種
についていろいろ店員に聞いた。そのかいあって、シートフィーダー内蔵のプリンタ
ーを買うことができた。これでやっと、A4サイズの用紙を、自動的に入れ替えるシ
ステムが完成した。なにかの折り、この苦難の道程を、秀夫は別の友達に話した。す
るとその友達は、「ただ単に用紙を自動的に入れ替えるのなら、プリンターを買い替
えなくとも、連続用紙を使えばいいんじゃないの?」と秀夫に言った。秀夫はギョッ
とした。友達の言うとおりである。秀夫は連続用紙の存在を知っていた。だが、思い
つかなかった。自動的に用紙を入れ替えるのならシートフィーダーがなければという
思い込みが、連続用紙を使えば、シートフィーダーを使わなくとも、紙をいちいち入
れ替える必要はないという思いつきを、頭のどこかに押し込んでしまっていたのであ
った。

ーーー 四コマ物語 説明

四コマ物語とは
 (1) 四コマ物語とは、私、如月文実(きさらぎ ふみじつ)が新たに開発した
文学形態(?)です。
 (2) 四コマ物語は、起承転落の4小節からなる小説です。
 (3) 題材は、日常生活のできごと・道端で転がっているような話・スポ−ツ・
社会風刺・おとぎ話・パロディ−などさまざまです。
 (4) みなさんも挑戦してみませんか。そして、001、002と、ネットの中に四コ
マ物語ワールドを作ってみませんか。

 特徴、可能性
 (1) 文が短く、読みやすい・読むのにつらくない。
 (2) その中にもジャンルがいろいろある。
(3) ジャンルの中でもバカバカしいのからシビヤーなものまで、バライティー
にとむ。
 (4) ジャンルがいろいろあり、この先好きなものだけ拾い読みできる。
 (5) ジャンルがいろいろあり、老若男女はばひろく楽しめる。
 (6) 読者自信が自由に新たな四コマ物語のサイトを作ることも可能。
 (7) この形式に当てはめればだれでも簡単に小節が書ける。
 (8) この形式に当てはめて、既存の小説を四コマ物語にすることができる(要
約四コマ)。
 (9) これを元に短編、長編小説を書くことも可能。 
 (10) (4)[落]を組替えることにより小説を改造できる(陰、陽)。
 (11) 将来、俳句、和歌のように、「四コマ物語集」ができるかも?
 (12) 将来、四コマ物語の大きなネットができるかも?