如月 文実(きさらぎ ふみじつ)です。泥その2 3作品を投稿いたします。

 わが、四コマ物語ワールドにようこそ。作家としての人格、如月 文実(きさらぎ
 ふみじつ)です。
 今回の四コマ物語は、以下の3作品です。

泥その2
如月文実
 この四コマ物語は、人間の心の泥の部分を表した四コマ物語です。

 飼い犬に噛まれる。
 (1) 長年勤めていた社会福祉施設を停年退職した後、上条は、その施設と関係
の深い、福祉関係の市民グループの役員となった。そして、退職した施設には、欠員
補充として、一人の若者が新たに採用された。きくところによると、その青年は、同
郷で、しかも同じ高校の出身者だそうだ。上条は、それまで、その青年とはまったく
面識もなかった。しかし、年こそ離れているとはいえ、同郷で、高校では先輩、後輩
の関係。そして職場では、自分の後釜として入ってきたとなると、親近感を感じざる
をえなかった。幸い、今いる団体と、もといた施設とは、関係が深く、彼とも会う機
会があるので、彼には、目をかけてやろうと上条は想った。
 (2) 上条は、今いる団体の活動の関係から、ちょくちょく元いた施設におとづ
れる。そして、そのついでに、わが後釜の様子をきく。しかし、あまりよい評判をき
くことがない。彼は、常に積極的な自分と比べ、かなり消極的で、与えられた仕事は
それなりにこなすが、それ以上のことはしようとしない。若くて、経験が少ないと言
ってしまえばそれまでだが、しかしそれでは、同郷人として、先輩として、自分の後
釜としてこまる。そこで、上条は、今いる団体の機関誌作りに協力させ、その中で彼
を鍛えてやろうと思った。そして、今、理事長をしているかっての同僚に話を持ちか
けた。
 (3) 下条は、こっそり自分が担当している機関誌に、先日、上条が企画したイ
ベントを批判する記事をのせた。下条は、上条のことをきらっていた。上条が、自分
と同郷、同学校卒で目をかけようとする理屈はわからないでもない。しかし、あの説
教がましい言い方は、うざい。形式的には、自分はヤツの後釜かもしれないが、この
施設に就職するのに、ヤツの力は一切借りてはいない。自分の力で勝ち取った就職先
である。だのに、引退した人間にとやかく言われるすじあいはない。下条は、自分が
ちょっと上の存在だからといって、偉そうにしているヤツのはなっぱしらをへし折っ
てやりたかった。そして自分のウサをはらし、ヤツに反省をさせてやりたかった。そ
して、自分がけっして、下の存在でないことを示してやりたかった。
 (4) 上条は、機関誌を読んで驚いた。まるで、大事に世話をしていた愛犬に噛
まれたような気がした。そして、いままで目をかけてやったヤツの裏切りに逆上した
。そして、OBの力をフルに発揮し、理事たちにおもいっきり圧力をかけ、下条を施
設から追い出した。
         余裕を持って
 (1) 隼人は、とても時間に几帳面な男であった。幼稚園のころから、40に近
いこの歳になるまで、1度も遅刻をしたことのない男であった。隼人が、遅刻をしな
いそのコツは、ごく簡単なことで、時間に余裕を持つこと。学校に行っていた時も、
会社にかよう今も、30分以上の余裕を持って出掛けるようにしている。したがって
、始まる30分以上も前に、目的地には到着することとなり、いつも1番乗りをはた
していた。また、万が一、なにかトラブルが発生したとしても、時間に余裕を持って
いる分、対処し、間に合わせることができていた。
 (2) ところが、勤続20年、無遅刻無欠勤の表彰を迎えるその日の朝、思わぬア
クシデントがおこった。彼としたことが、昨日は、記録達成をひかえ、緊張してあま
りよく眠られなかったことに加え、うっかり、目覚まし時計をかけるのを忘れていた
。隼人が目を覚ましたのは、いつもより、30分ほど遅れた時だった。しかし、30
分なら、まだ取り戻せる。隼人は着替えると、朝飯も食べず、さっさと車を飛ばし、
会社へと向かった。
 (3) ところが、悪い事は重なるものである。時間的には、いつものように、余
裕を持って運転していても、会社には、ギリギリ間に合う時間だった。しかし、少し
でも、時間的な余裕がほしかった隼人は、いつもより車のスピードを上げ、時間の余
裕をかせごうとした。そしてそれが、心の余裕を低下させ、注意力を散漫にさせた。
そこに人が飛び出してきて、はねてしまった。隼人は、しまったと思った。車を止め
、引いた人間をすぐ病院に運ぼうと思った。ところがすぐ、そんなことをしたら、会
社に遅刻してしまう。幼稚園から続いている大記録が途切れてしまう。これまで、自
分が築いてきたことが、おじゃんになってしまう。とにかくまず、記録を達成するこ
と。それから引いた人間を病院に送ろう。隼人は、そう割り切ってしまった。そして
そのまま、車は、会社へと向かうこととなった。
 (4) アクシデントはあったが、隼人は無事、5分前に会社に到着することがで
きた。朝礼では、上司から、20年間、無遅刻無欠勤の賞状をいただいた。しかし、昼
休みには、引きにげ犯人として、警察から逮捕状…。以後会社には、ずっと欠勤する
こととなった。
おれは違う
 (1) アメリカ留学第一日目、流太郎は、キャンパスでデモ行進している黒人の
学生たちを見た。彼らは元気よく、そして勢いよく大声を張り上げ、黒人の自由と権
利の保証を訴えていた。日本の大学のキャンパスでは、今ではこんなすさまじい風景
はまず見られない。また、デモ行進に参加している学生のほとんどが、日本の大学で
はまず見ることのない黒い肌の持ち主であり、しかもその中に、ところどころに白い
肌の人間も混じっていることが、流太郎に、恐ろしさにも似たすさまじさを感じさせ
た。
 (2) 今日は授業もなく、流太郎のする仕事といえば、これからの生活の場とな
る大学の寮へ行き、届いているはずの荷物を整理することだけである。大学の寮は二
人部屋であるが、ルームメイトは九分九厘日本人ではないだろう。そしてそれは、自
分の部屋の前に書いてある名札を見て確実なものとなった。ドアの内側から物音がす
る。ルームメイトが中にいるらしい。流太郎は恐る恐る中に入った。そこには黒い肌
を持った人間がいた。流太郎は、体中の筋肉がサッと硬直するのを感じた。
 (3) だがその緊張感も、初対面でありながら親しく話しかけてくるルームメイ
トの気さくな人柄により、しだいにほぐれていった。ほぐれるにつれ、流太郎は、ル
ームメイトを、違う肌の色を持っているが、同じ人間として、同じ大学の学生として
、受け入れられるようになっていった。流太郎も、彼と親しく話せるようになった。
そして、違うと感じていた自分の心の狭さを恥じた。



 (4) ところがである。話の流れの中で、流太郎が彼に、「先ほどのデモに君も
参加したのか」と尋ねたとたん、彼のほがらかな表情が、一変してムッとした表情と
なった。そして彼は、彼と同じはずの黒人の悪口を言い始めた。次から次へと飛び出
す彼の暴言には、流太郎にとっても、聞くに聞けないような言葉もあった。彼の言葉
が一呼吸おいたところで、流太郎は、なぜ同じ黒人なのに黒人の悪口を言うのかをき
いてみた。彼はもっとムッとした表情と口調でこう答えた。「おれの肌の色は黒い。
しかしおれの曾祖父はイギリス人で、おれの体の中にはイギリス人の血が混ざってい
る。だから、おれは、ヤツラとは違う」。
ーーー 四コマ物語 説明
四コマ物語とは
 (1) 四コマ物語とは、私、如月文実(きさらぎ ふみじつ)が新たに開発した
文学形態(?)です。
 (2) 四コマ物語は、起承転落の4小節からなる小説です。
 (3) 題材は、日常生活のできごと・道端で転がっているような話・スポ−ツ・
社会風刺・おとぎ話・パロディ−などさまざまです。
 (4) みなさんも挑戦してみませんか。そして、001、002と、ネットの中に四コ
マ物語ワールドを作ってみませんか。

 特徴、可能性
 (1) 文が短く、読みやすい・読むのにつらくない。
 (2) その中にもジャンルがいろいろある。
(3) ジャンルの中でもバカバカしいのからシビヤーなものまで、バライティー
にとむ。
 (4) ジャンルがいろいろあり、この先好きなものだけ拾い読みできる。
 (5) ジャンルがいろいろあり、老若男女はばひろく楽しめる。
 (6) 読者自信が自由に新たな四コマ物語のサイトを作ることも可能。
 (7) この形式に当てはめればだれでも簡単に小節が書ける。
 (8) この形式に当てはめて、既存の小説を四コマ物語にすることができる(要
約四コマ)。
 (9) これを元に短編、長編小説を書くことも可能。 
 (10) (4)[落]を組替えることにより小説を改造できる(陰、陽)。
 (11) 将来、俳句、和歌のように、「四コマ物語集」ができるかも?
 (12) 将来、四コマ物語の大きなネットができるかも?