如月 文実(きさらぎ ふみじつ)です。学生時代その3 3作品を投稿いたします。

 わが、四コマ物語ワールドにようこそ。作家としての人格、如月 文実(きさらぎ
 ふみじつ)です。
 今回の四コマ物語は、以下の3作品です。

                 学生時代その3
                             ペンネーム如月文実
 この4コマ物語は、そうですね、大人・社会人にステップアップする前の学生を主
人公とした作品ですね。
                 催眠術の授業
 (1) 授業開始のチャイムが鳴り、疋田先生が教室に入ってきた。疋田先生は、
国語の授業を始めたつもりだろうが、生徒たちにとってはそうではない。先生の声は
、調度、オープンリールのレコーダーを再生したような声で、ぼそぼそと聞取りにく
く、ちかも小さい。また、しゃべりかたは一本調子でめりはりがなく、子守歌のよう
だ。生徒たちにとってそれは、国語ではなく催眠術の授業であった。
 (2) 生徒たちは概ね、三つのグループに分かれる。一つは、そのまま催眠術に
かかり、熟睡してしまうグループ。彼らはもともと、授業に興味がなく、自ら催眠術
にかかることを望み、眠ってしまう。二つめは、全く催眠術にはかからないグループ
。彼らは、授業とは別の用事をしているので、術者の声が耳に入らない。そして、三
つめは、催眠術と戦い、必死に授業をきこうとするグループだ。
 (3) 三つめのグループはみな、根がまじめな生徒たちだ。彼らは一生懸命授業
をきく。しかし、一生懸命になればなるほど、術中におちいり、睡魔が襲ってくる。
しかし、眠るわけにはいかず、必死に睡魔と戦う。そしてそのうえで、授業をきかな
ければならない。ここで睡魔を断ち切るには、大声を出したり、立って軽い運動など
をすればいいのだが、根がまじめな彼らには、そんな礼儀に反することはできない。
彼らのできることと言えば、首を軽く降ったり、ほっぺをつねったりすることだ。中
には、ついに睡魔に負け、首で舟を漕ぐ者も現れる。
 (4) チャイムが鳴り、先生もしゃべるのをやめる。そしてみな、催眠術から開
放される。休み時間、三つめのグループでは、催眠術にたえた者が得意げになる。
万年学生
 (1) 学はとうとう大学4年生になった。来年の春には卒業しなければならない
。当然のことながら、卒業すれば大学生ではなくなってしまう。振り返れば、これま
での学生生活の中で大学生が一番よかった。高校までは、上の学校に上がるための熾
烈な受験戦争の中に身をおき、問題集に追い回され、模擬テストと格闘する毎日だっ
た。先生や親に与えられたスケジュールをこなし、日々ストレスとプレッシャーを感
じていた。しかし大学は天国であった。学習する内容もスケジュールもすべて自分の
すきにできる。授業を休もうがさぼろうが、だれにも文句を言われない。休みはたく
さんあり、自由もたくさんあり、ストレスもプレッシャーもなく、気ままに時間を過
ごせる。しかし、その天国での生活も来春には終わるのだ。
 (2) 翌春、学は大学を卒業した。そして同じ大学の大学院に進学した。大学と
いう天国を出て、経済社会というまだ経験したことのない地獄に身をおくのが怖かっ
た。しかし留年して天国にとどまるのは肩身が狭い。そこで学が選んだ選択肢が、大
学院生として天国に居座ることだった。母校の大学院は定員割れなので容易に入学で
きる。大学院には2年の修士課程と、その上の3年の博士課程とがあるが、先輩たち
を見ていると進んで留年する者も多く、院での留年はカッコ悪いものでもないらしい
。ということで、学はあと10年天国で生活できる権利を得た。
 (3) そしてあっという間に10年が過ぎ、学は博士課程での6年目をむかえてい
た。もう留年することもできない。来年春には、卒業するにしても退学するにしても
、天国から出なければならない。もうこれ以上、上の課程はない。しかし、この期に
及んで、学はまだ天国から出たくないと思っていた。地獄には行きたくないと思って
いた。
 (4) 翌春、学は大学院を卒業した。そして新たに、同じ大学の別の学部に学士
入学した。
初夢
 (1) 
コロコロコロ、勝負をかけたパチンコ玉の最後の1コが空しくアウトボックスに吸い
込まれていった。「ああ、今日もだめか…」。武志はまたいつものごとくパチンコ台
の前で肩を落とした。大晦日の夜、今年最後の運試しとして、いつもより気合いを入
れて勝負に臨んだのだが、結局今日も負けてしまった。閉店までまだ1時間近くもあ
るというのに武志は店を出ざるをえなかった。もちろん他のどのパチンコ店にもよる
こともできず、まっすぐ下宿のアパートに帰った。
 (2) アパートに帰った後、武志は紅白歌合戦は見ずに、以前友人から、ただで
もらったビデオをセットした。そして買い置きのカップラーメンを年越しソバの代わ
りに食べた。もしパチンコに勝っていたら、レンタルビデオショップで最新のビデオ
を何本か借り、近くの店から年越しソバを出前してもらうはずだった。しかし現実は
厳しかった。何回も見たビデオを見ながら、武志はぼんやりとこの1年を振り返った
。この1年は本当についてない年であった。パチンコには負けてばかりだった。その
ため、親から仕送りしてもらった金も、バイトで稼いだ金も、奨学金も、「後で必ず
返すから」と言って友人から借りた金も、そのほとんどがパチンコ店への寄付になっ
てしまった。武志のこの1年の生活サイクルは、大学、バイト、パチンコの三つでま
わっていた。特にパチンコは唯一の楽しみであり、1年を振り返って思い出されるの
はパチンコのことだけであった。だが、こう負けが込んでいると思い出すのもいやに
なる。「過去のことをくよくよ考えても仕方がない」。武志はそう思い直し新しい年
に望みを託した。
 (3) すると突然、武志の頭にギャンブラーらしいアイディアが浮かんだ。「1
富士、2鷹、3茄子」。これらが初夢に出てくると、その年は縁起がよいと言われる
。「たとえ3番目の茄子でも、夢の中に出てきたら来年はパチンコに勝てるかもしれ
ない」。そう思った武志は、元手のかからない、一か八かのギャンブルに賭けること
にした。夢はこれを見たいとリクエストして見られるものではない。しかし、心理的
にその可能性を高めることはできる。夢には普段強く願っていること、気にかけてい
ることが現れやすい。中途でビデオを消し、武志は富士山の上を鷹が茄子をくわえて
飛んでいる絵を書いた。そしてそれをじっと見つめ、「1富士、2鷹、3茄子」と何
度も何度も唱えた。といっても、これを何十分も続けるのは疲れる。コーヒーを飲ん
だり、お菓子を食べたり、ちょっとビデオを見たりして休憩しながら、それを年の明
けた午前3時ごろまで断続的に続けた。そしていよいよ床に入る。まくらの下には絵
を敷き、眠るまで心の中で、「1富士、2鷹、3茄子」と唱え続けた。
 (4) しかし残念ながら夢には、富士山も鷹も茄子も現れなかった。新年早々、
武志はまたも、ギャンブルに負けてしまった。しかし少しも落ち込んではいなかった
。むしろ気分は非常に爽快であった。なぜなら代わりに見た夢が、パチンコで大勝ち
した夢だったからだ。
ーーー 四コマ物語 説明
四コマ物語とは
 (1) 四コマ物語とは、私、如月文実(きさらぎ ふみじつ)が新たに開発した
文学形態(?)です。
 (2) 四コマ物語は、起承転落の4小節からなる小説です。
 (3) 題材は、日常生活のできごと・道端で転がっているような話・スポ−ツ・
社会風刺・おとぎ話・パロディ−などさまざまです。
 (4) みなさんも挑戦してみませんか。そして、001、002と、ネットの中に四コ
マ物語ワールドを作ってみませんか。

 特徴、可能性
 (1) 文が短く、読みやすい・読むのにつらくない。
 (2) その中にもジャンルがいろいろある。
(3) ジャンルの中でもバカバカしいのからシビヤーなものまで、バライティー
にとむ。
 (4) ジャンルがいろいろあり、この先好きなものだけ拾い読みできる。
 (5) ジャンルがいろいろあり、老若男女はばひろく楽しめる。
 (6) 読者自信が自由に新たな四コマ物語のサイトを作ることも可能。
 (7) この形式に当てはめればだれでも簡単に小節が書ける。
 (8) この形式に当てはめて、既存の小説を四コマ物語にすることができる(要
約四コマ)。
 (9) これを元に短編、長編小説を書くことも可能。 
 (10) (4)[落]を組替えることにより小説を改造できる(陰、陽)。
 (11) 将来、俳句、和歌のように、「四コマ物語集」ができるかも?
 (12) 将来、四コマ物語の大きなネットができるかも?