如月 文実(きさらぎ ふみじつ)です。青春四コマその2 3作品を投稿いたします。

 わが、四コマ物語ワールドにようこそ。作家としての人格、如月 文実(きさらぎ
 ふみじつ)です。
 今回の四コマ物語は、以下の3作品です。

青春4コマその2
如月文実
 この四コマ物語は、青春期にある、ちょっと屈折した少年を主人公にしています。
おっとこの回では、少女も登場しますよ。
  青春学園ドラマ
 (1) 今週からテレビで、新しい青春学園ドラマが始まった。主人公は、勉強は
できずがさつだが、思いやりのある心の暖かいつっぱり生徒。敵役は、勉強ができ、
エリート気取りで思いやりのない心の冷たい優等生。お決まりのパターンである。「
ちっ、くそ面白くもねえ」と、博文はチャンネルを切り替えた。



 (2) 博文は、偏差値から見れば、今は某一流大学の2年生。でも出身高校は、
三流に近く、大学進学希望者も少なく、合格率もよくなかった。それだけに大学進学
を希望するだけで学校内では目立った。そのため、出る杭のごとく、多数派から打た
れる存在となっていた。普通になにかを話していても、二言目には、「さすがに大学
に行こうとするヤツは言うことが違う」とイヤミを言われた。別になにも言っていな
いのに、「人間は自分で金を稼いで生活してこそ価値がある。大学に行くことが偉い
のではない」と説教された。顔をつきあわすとああだこうだとプレッシャーをかけら
れ、「大学を出て魚屋の店員になったヤツがいる」とか、「働かずブラブラしている
ヤツがいる」とか、遠回しに悪口を言われた。高校時代は、大学進学を決めた直後か
青春学園ドラマのごとく、
優等生=悪しき人間性の持ち主
というレッテルを貼られ、かつ、青春学園ドラマとは違い、多数派からしいたげられ
ていた。そしてこれに反抗することもできなかった。なぜなら、青春学園ドラマのよ
うに、「大学に行くからって偉そうにするな」と言えば一般受けする。しかし、「大
学に行かないからってひがむな」と言えば一般受けしない。それどころか多数派から
いっそう攻撃されることは必定である。しいたげられるかどうかは成績の良し悪しで
決まるものではない。どちらの数が多いかで決まるものだ。博文は、自分の高校時代
の経験からそう感じていた。
 (3) だが、多数派にしいたげられればしいたげられるほど、少数派の結束は堅
くなる。博文と同じく進学を希望していた者たちはよき友人であった。今日はその友
人らと1年半ぶりに再会する。みんなどうしているだろうか。今日はきっと昔話に花
が咲くに違いない。博文は胸踊らせた。
 (4) だが博文は、この少数派の中でも少数派になっていた。集まった者のうち
、現役で偏差値の高い大学に進んだのは博文一人。あとはみな、1浪していたり、偏
差値の低い大学に進学していた。「さすがに一流大学に行っているヤツは違う」とか
、別になにも言っていないのに「大学のレベルでは人間の価値は決まらない」とか、
「浪人したほうが人間性は深まる」と、博文はチクチク攻められた。「ちっ、くそ面
白くもねえ」と、博文は1次会だけで家に帰った。部屋に入りテレビをつけると、今
週から始まったお決まりの青春学園ドラマが流れた。博文はすぐさまテレビのスイッ
チを切った。
チャック全開
 (1) ズボンをはく時、うっかりチャックを閉め忘れ、そのまま戸外に出てしま
う。男ならこんな経験をしたことがあるだろう。ボタンをかけ、バンドを締め腰がバ
ッチリしまると、ついチャックのことを忘れてしまうのだ。自分が後でそれに気がつ
けばまだよいが、他人からそれを指摘された時ほど恥ずかしいことはない。特に、周
囲に大勢の人がいる時にはなおさらだ。誠はちょくちょくこれをやり、そのたびに恥
をかいてきた。そんな誠の経験が今回の悲劇をひきおこす。
 (2) 部活が終わり学校から家へ帰る途中、誠は駅のホームで同級生のユリカち
ゃんに出会った。ユリカちゃんは、顔はまあ普通だが、とても性格のよい女の子であ
った。そして誠はこのユリカちゃんに密かに好意を寄せていた。誠はまだ、ユリカち
ゃんとは話をしたことがない。そして、ユリカちゃんとは電車の方向は同じである。
これはチャンス、その間なんとかお話ししたい。誠は高鳴る鼓動と全身の筋緊張をお
さえ、「こんにちは」と声をかけた。へたなきっかけの作り方だったが、それでも電
車の中でおしゃべりをすることには成功した。こんなへたな言葉しかかけられないよ
うな男であるから、話がはずむわけはない。それでも誠にとっては、心臓ドキドキ、
心ワクワク、筋肉ビンビンの幸せなひと時であった。
 (3) だが、そんな中で悲劇は起こった。一つの会話の途切れた後、ユリカちゃ
んが突然、平然とした顔つきと口調でしかも普通の声の大きさで、「桜川君、チャッ
ク開いてるよ」と指摘したのであった。誠はこの一言に大きなショックを受けた。ズ
ボンのチャックを閉め忘れるという恥ずかしいことを、よりによってあこがれの女性
の前でやってしまったのだ。昨日着替え忘れたパンツを一番見られたくない相手にチ
ャックの間から見られてしまった。しかもそれを指摘したのが、いままで女の子らし
い娘だと信じていたユリカちゃんだったとは…。誠の受けたショックは三重であった
。ユリカちゃんが、公衆の面前でそんなことを平然と言う女だとは思わなかった。シ
ョックと共に彼女に対する誠のイメージは脆くも崩れていくのであった。しかしもう
指摘された以上は仕方がない。そう開き直り、誠はズボンのチャックに手をかけた。
 (4) そのとたん、ユリカちゃんの顔が真っ赤に染まった。そして心を取り乱し
たか細い、泣きそうな声で、「違う、カバンのチャック…」と言い直した。そうなの
だ、全開していたのはズボンのチャックではなくカバンのチャックだったのだ。よく
考えてみれば、ユリカちゃんはそんな言い方をする女の子ではない。それを自分は、
日頃の経験からズボンのチャックと思いこんでしまったのだ。誠はすぐカバンのチャ
ックを閉めた。クスクスと笑い声がきこえる。ユリカちゃんは赤い顔を伏せたまま。
誠の頭の中は真っ白でただ呆然としているだけ。この後二人の口は完全にチャックさ
れ、再び開くことはなかった。こうして、誠の悲劇の1日は終わった。
サイン
 (1) ミツルは、江本猛紀著『プロ野球を10倍楽しく見る方法』(昭和57年、K
ベストセラーズ)を読んでいた。その中に面白い項目を発見した。
 「選手が切符を欲しがる時は ∧投手が客席にサインを送ってる!」
 巨人戦の切符はあいかわらずプラチナペーパーで、選手の間でも垂涎の的。甲子園
でのゲームはなんとかなるが、後楽園となるとなかなかむずかしい。それでも選手は
、あの手この手を使ってネット裏の席を手に入れる。
 地元なら家族や知り合いを招待することもあるが、巨人以外の選手がなぜ後楽園の
切符に固執するかというとわけがある。
 東京で親しくお付き合いしている女性にプレゼントするのである。そして、登板予
定日が分かっていれば、そのプラチナペーパーを進呈して『見に来てくれ』と頼む。
 だが、ただ見に来てもらうだけでは面白くない。そこで、彼女とサインの打ち合わ
せをする。
 『ロージンバックを2度ポンポンと上に放り投げた後、必ずきみの方を見るからね
』。
 普通の女性なら感激する。『数万人の観客の中で、私だけのことを見てくれるのね
』と、ポーッとなる。
 切符が手に入らなくても、この手は使える。
 『テレビで見てくれよな。おれがマウンドで左手をグルグル回した時は、お前のこ
とを考えている時だよ』(中略)といったサインで、女性の気を引いている。(後略
 引用終わり)」
 この1文は、ミツルにすばらしい名案をひらめかせた。ミツルはさっそく、ガール
フレンドのアキちゃんの家に電話をかけた。
 (2) 翌日、ミツルの中学校のグラウンドで、他校の野球部との親善試合が行わ
れた。その先発投手はミツルである。実はミツルは昨日の電話で、「明日の試合、見
に来てくれ」とアキちゃんを誘った。そしてその時、「ぼくが帽子のつばにさわった
時は、きみのことを考えているサインだよ」と告げた。その日はアキちゃんにも所用
があり、残念ながら最初から試合を見ることはできない。しかし途中からでも必ず見
に行くと約束してくれた。アキちゃんが来る前に試合をぶちこわしてはいけないと、
ミツルは気合のこもったピッチングを続けた。
 (3) そして4回の表、自校の守りで0対0、ワンアウト1塁の場面でアキちゃ
んが来た。ここぞとばかりにミツルはぼうしのつばに手をやった。そして、セットポ
ジションでランナーに目をやるかっこうをしてアキちゃんの顔を見た。彼女の顔はす
でにポーッと赤くなっており、目と目が合うやいなや、アキちゃんは恥ずかしさのあ
まり下を向いた。「決まったぜ、ベイビー」。ミツルは心の中で叫んだ。そして、真
正面の敵と真横の味方のハートにとどめを差すべく、気とアイのこもったボールを投
げようと、鋭く腕を振った。
 (4) ところが次の瞬間、突然キャッチャーが立ち上がった。突然のできごとに
、ミツルはバランスをくずし大暴投。ランナーは2塁を回り3塁までたっした。キャ
ッチャーは、たまらずマウンドに駆け寄り、「帽子のつばにさわるのは、ウエストの
サインじゃなかったのか」とサインの確認をした。そうなのだ、つばにさわるのはも
ともとウエストのサインだったのだ。ミツルは昨夜からすっかり心が舞い上がってお
り、それをすっかり忘れていた。キャッチャーは「ドンマイ、ドンマイ」とミツルの
動揺を抑えようとする。だが二つの動揺が重なり、ミツルはそれを制御することがで
きなかった。結局結果はどちらも散々に終わった。
ーーー 四コマ物語 説明
四コマ物語とは
 (1) 四コマ物語とは、私、如月文実(きさらぎ ふみじつ)が新たに開発した
文学形態(?)です。
 (2) 四コマ物語は、起承転落の4小節からなる小説です。
 (3) 題材は、日常生活のできごと・道端で転がっているような話・スポ−ツ・
社会風刺・おとぎ話・パロディ−などさまざまです。
 (4) みなさんも挑戦してみませんか。そして、001、002と、ネットの中に四コ
マ物語ワールドを作ってみませんか。

 特徴、可能性
 (1) 文が短く、読みやすい・読むのにつらくない。
 (2) その中にもジャンルがいろいろある。
(3) ジャンルの中でもバカバカしいのからシビヤーなものまで、バライティー
にとむ。
 (4) ジャンルがいろいろあり、この先好きなものだけ拾い読みできる。
 (5) ジャンルがいろいろあり、老若男女はばひろく楽しめる。
 (6) 読者自信が自由に新たな四コマ物語のサイトを作ることも可能。
 (7) この形式に当てはめればだれでも簡単に小節が書ける。
 (8) この形式に当てはめて、既存の小説を四コマ物語にすることができる(要
約四コマ)。
 (9) これを元に短編、長編小説を書くことも可能。 
 (10) (4)[落]を組替えることにより小説を改造できる(陰、陽)。
 (11) 将来、俳句、和歌のように、「四コマ物語集」ができるかも?
 (12) 将来、四コマ物語の大きなネットができるかも?