如月 文実(きさらぎ ふみじつ)です。四コマ物語〜おとぎ話4作品を投稿いたします。

 わが、四コマ物語ワールドにようこそ。作家としての人格、如月 文実(きさらぎ
 ふみじつ)です。
 では、四コマ物語を投稿させていただきます。今回は、その中の、おとぎ話です。
 なお、前回の投稿では、記号で丸一、丸二と書いたのが、文字化けしてしまったの
で、数字のところは()で示します。

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おとぎ話その1
如月文実
 この四コマ物語は、おとぎ話を四コマ物語の形式にて表現したものです。

  ナメクジの恩返し
(1) 昔々ある所に、1匹のナメクジがおりました。ナメクジがエサを求めて地面
をのろのろはいずっていますと、同じくエサを求めて地面を力なくヒョコンピョコン
とさまよい跳んでいる殿様蛙にであいました。さすがにそこは殿様蛙、見つけた獲物
にすぐには飛びつかず、「ゲロゲロ、うまそうなナメクジじゃ。余はお前を食べるぞ
よ」と一言断りを入れました。ナメクジはなんとか食べられないようにしなくてはと
思い、「殿様、お願いします。どうか私を助けてください。もし助けていただけるの
なら、いつか必ずご恩返しいたします」と命乞いをしました。すると蛙は、「お前に
そんなことができるのか」と、ちょうどマッチ棒を横に2本並べたような切れ長のい
やらしい流し目でナメクジを見ました。ここで疑われては大変だと、ナメクジは何を
勘違いしたのか、「はい、この槍にかけて」と槍を出そうとしました。ナメクジには
角(触覚)はありますが槍はありません。それでもなお槍を出そうと必死になり、そ
のため汗が流れその塩分で自分の身体が次第に融けてきたにもかかわらず、それでも
なお槍を出そうと、さらに必死になりました。そのナメクジの姿に感動し、蛙は許し
てやることにしました。
(2) それから幾日かたったある日、例のごとく殿様蛙がエサを求めて地面を力な
くピョコンピョコンとさまよい跳んでいますと、同じくエサを求めて地面をニョロニ
ョロとさまよいはいずっている1匹の蛇の青大将にであいました。さすがにそこは青
大将、見つけた獲物にすぐには飛びつかず、「シュルシュル、うまそうな蛙じゃ。わ
しはお前を食べてつかわす」と一言断りを入れました。蛙はなんとか食べられないよ
うにしなくてはと思い、いつかナメクジとであった時のことを思い出し、「大将、お
願いします。どうか私を助けてください。もし助けていただけるのならご恩返しに竜
宮城へ連れて行ってあげます」と命乞いをしました。すると青大将は青い身体を真っ
赤にし、「おれは泳げないんだ」と蛙をにらみつけました。この時、蛙は重大なミス
に気がつきました。「しまった、セリフをあやまった」。
(3) と思ってももう後の祭り。蛇ににらまれた蛙。あわや蛙が蛇のエじキになろ
うとしていたまさにその瞬間、さっそうと中を割って入ってくる者がいました。それ
は、蛙に恩返しを誓ったナメクジでした。「殿、助太刀にまいりました」と力強く言
葉を放つナメクジに蛙は感動し、「ナメクジさん、あの時の恩返しに来てくれたんだ
ね」と涙を流して喜びました。ナメクジは調子にのって、「はい、この槍にかけて」
とまた、ない槍を出そうとしてまた汗を流し始めたので、「こいつ、大丈夫かなあ」
と蛙は例の流し目でナメクジを見ました。
(4) ところがところが、恩返しをするといっても自分の身替わりとなって蛇のエ
サになるのが関の山だろうと思っていたナメクジが、あにはからんや青大将を追い払
ってしまったのです。蛙はグーグー鳴るお腹を押さえ、したたるよだれを拭いながら
、なメクジにお礼を言いました。

 *1 この作品は私が中学3年の時、文集で発表した物のリメイクです。その当時
は、「四コマ物語」とは言っていませんでしたが、その原点となる作品です。
 *2 三竦み=ナメクジが蛙、蛙が蛇、蛇がナメクジをおそれること。これが転じ
て、三者が互いに牽制しあい、身動きできない状態。『日本国語大事典』参照) 


  イガグリコロコロ
(1) 海の近くの岡の上に1本の栗の木があった。その栗の木の中にいつも海をじ
っと見つめている1個のイガグリがいた。なぜ海を見つめているかというと、風の噂
で海の中には自分と姿、形がそっくりな生物がいるという。イガグリは一度そいつに
あってみたいと思い、海を見つめていたのであった。親戚のドングリは、コロコロ転
がりお池にはまってドジョウと友達になったという。イガグリもこれにあやかり、木
から落ちる時の反動を利用し転がって海にはまり自分にそっくりな生物を捜し、友達
になろうという作戦を立てていた。
(2) 風が吹いた。イガグリが木から飛ばされる。ここぞとばかりイガグリはその
反動を利用し岡をコロコロ転がって海へ向かう。そして作戦どおり海へはまることに
成功した。するとちょうどそこに、自分と姿、形のそっくりな生物がいた。その生物
の名をウニという。ウニのほうも風の噂で、岡には自分と姿、形のそっくりな生物が
いると聞いており、一度あってみたいと思っていた。突然現れた自分と姿、形のそっ
くりな生物に、ウニは「こんにちは」と挨拶した。イガグリも同じようにウニに挨拶
した。こうして1匹と1個は意気投合し友達となりしばらく一緒に遊んだ。
(3) だが、これでめでたしめでたしというわけにはいかなかった。潮の加減で近
くにあった岩のかけらが落ちイガグリを直撃したのである。そしてその衝撃でイガグ
リは真っ二つに割れ、中からいくつかの栗が姿を現した。これに驚いたのがウニであ
る。さては自分とそっくりな姿に化け油断させたすきに自分を食べるつもりだったな
。そう疑いの念を持ったウニは百八十度態度を変え、栗を海から追い出した。栗は浜
へに投げ出されてしまった。
(4) 浜に追い出された栗は途方にくれ、故郷の岡が恋しくなり泣きだしてしまっ
た。とそこへ1個の貝が出てきて「こんにちは」と栗に挨拶した。見ると、なんとそ
の貝は栗と姿、形がそっくりであった。姿、形がそっくりということで栗と貝は意気
投合ししばらく一緒に遊んだ。その貝の名をハマグリという。


 スッポンと月
(1) 初秋を感じさせる涼しい風の吹くある夜、スッポンたちがぞろぞろと月のよ
く見える草原へ集まってきた。その日は夜空にたくさんの星がちりばめられ、その中
に満月がくっきり浮かんでいた。世の中に「月とスッポン」という言い回しがある。
そのためスッポンたちは常に月に見下された、肩身の狭い生活をしいられてきた。そ
んな生活から自分たちを解放するためには、自分たちが月よりも優秀であることを示
さなければならない。今宵はそれを示し新たに「スッポンと月」という言い回しを成
立させるために、月に戦いを挑もうというのである。
(2) 前の戦いでは月に向かって石を投げその追い落としを計ったのだが、石は月
にはぜんぜん届かず、それどころか投げた石が落ちてきて他のスッポンに当たり、多
くの死傷者が出てしまった。今回はその教訓を生かし武器には弓矢を用い、横一列と
なって矢を放つこととした。
(3) 「攻撃開始」。スッポンの大将の合図とともに矢がいっせいに放たれた。さ
すがに、前回の石よりも矢は遠くまで飛んでいった。だが月まではまだまだ届かなか
った。しかしそれでもなおスッポンは攻撃をやめなかった。少しでも矢を遠くまで飛
ばそうと、よりいっそう力を込めて弓を引いた。そうするうちに空には黒い雲がどこ
からともなく現れた。黒雲はたちまちのうちに月を覆い隠した。そして次の瞬間、ゴ
ロゴロと地を裂くような雷鳴が響き黒雲からいなずまがひらめいた。驚いたスッポン
たちは、ふだん閉じている口をポカンと開けた。と同時にいなずまはスッポンたちを
直撃しそのほとんどが黒焦げとなり死んでしまった。
(4) それから数年が過ぎたある満月の夜、あの日に生き残ったスッポンたちとそ
の時まだ子供で戦いには参加できなかったスッポンたちが大人となり、またあの草原
にぞろぞろと集まってきた。体はゴムのカッパに包まれ、手にはピストルを持ってい
る。スッポンは、元来しつこいのとスタミナが売り物である。今は無理だとしても、
何十年、何百年後にはあるいは…。


  磁石の蹄鉄
(1) 空一面に星が美しく散りばめられた夜、東京にある馬小屋に天から神様が降
りてきた。神様は星空を旅するための馬を捜しており、馬小屋の馬たちに希望者はい
ないかと尋ねた。その結果3匹の馬が名乗りをあげた。その3匹の馬に神様は問題を
出した。神様は、「これが何に見える?」とU字形の鉄でできたひらべったい板をふ
ところから出した。その一方の先にはS、もう片方にはNと書いてあった。「それは
磁石です」、すかさず、エレクトーンという名の馬が答えた。しかしそれは正解でな
かった。少し間があいた後、今度はピアノという名の馬が「それは、くっつき石です
」と答えた。しかしそれも正解でなかった。そしてしばらく沈黙が続いた後、オルガ
ンという名の馬が「それは蹄鉄です」と答えた。それが神様の意図する正解であった
。その蹄鉄は神様の手によって、すぐオルガンの蹄にはめ込まれた。
(2) ところがである。そのすぐ後、神様は空高く舞い上がってしまった。どんど
ん遠く離れていく神様をオルガンは必死になって追い掛けた。神様を追い掛け、走っ
ていくうちに、やがてオルガンの前方に高い鉄の塔が見えた。それは東京タワーであ
った。神様はその頂きに舞い降りた。
(3) オルガンはタワーの下から「神様、神様」と呼び続けた。しかし神様は、な
んの反応も示さなかった。オルガンは少しでも自分の声が神様に聞こえるようにと、
力いっぱいジャンプして「神様」と呼んだ。するとどうだろう。ジャンプしたオルガ
ンの体はそのまま地面には落ちず、足が東京タワーの壁面に引きよせられタワーの壁
面に立ったのである。それは神様からもらった蹄鉄のせいであった。蹄鉄には強力な
磁力があり、それが鉄でできた東京タワーの壁面にオルガンを立たせたのであった。
それに気づいたオルガンは東京タワーの壁面をかけあがっていった。めざすは神様の
いる東京タワーの頂きである。
(4) ところがである。オルガンがタワーの頂きにたどりつくやいなや、神様はま
た空高く舞い上がってしまった。オルガンはまたタワーのてっぺんから神様を呼ぶこ
とになった。その声に答えるかのように、神様は喉をゴロゴロ鳴らした。すると雷が
おこりオルガンの蹄鉄めがけて落ちた。するとどうだろう、そのショックでオルガン
の背に羽がはえ始めたのである。オルガンはペガサスとなり空を自由に飛べるように
なった。神様はその背にまたがり、星空への旅が始まった。めざすは北極星