如月 文実(きさらぎ ふみじつ)です。鉄道小説の中編を投稿いたします。

 中篇は、作家としての人格、如月 文実(きさらぎ ふみじつ)が説明です。
しめしめ、やれやれの、山手線観光旅行、中篇を投稿いたします。
ーーーーー ここから
>  5
>  まず、最初に訪問する駅は、鶯谷駅。ここでは朝の時間帯に、駅名にちなんで、
> ウグイスの鳴き声を流している。その声をききながら、ホームにて朝飯を食べるの
> が第1のプランだ。
> また、それまで通過する駅については、私が、車内で、バスガイドならぬ列車ガイ
> ドを務めることにした。
>  勿論この企画は、二人から頼まれたのではなく、私の独断で決めさせてもらった
> 。
> これにより、てっちゃんの、鉄道への関心が芽生えればと、しつこく思う私だった
> 。
>  神田駅については、同じ文字、同じ読み方の駅がいろいろあること。東北新幹線
> が
> 、平行して走っており、京浜東北線のホームの壁上から、新幹線の頭の部分が見え
> ること。
>  秋葉原駅については、家電店およびアニメのグッズを売っている店が多いこと。
> そして、つくばエクスプレスが走っていること。
>  御徒町駅については、実際にはそのような地名はなく、住所は台東区上野である
> こと。アメヤ横丁という有名な商店街があり、一時から比べて少なくなっているも
> のの
> 、宝石店も多いこと。
> などを説明した。
> 二人とも、鉄道には疎いので、マニアックなことはなるべく避けて、聞いて誰もが
> 、
> 「ヘエー、そうなんた」と思うようなことを説明したつもりだ。
>  私、思うに、てっちゃんは興味を持って聞いてくれたようだ。
>  しめしめ。
>  ただ、秋葉原駅については、つくばエクスプレスよりも、アニメの店の方に興味
> を持ったのはちょっと残念。
>  これにたいし、兄の方は、まったく無関心だった。唯一反応したのが、秋葉原駅
> での説明で、女房がいたら、新しい洗濯機がほしい。ネックレスがほしいと言われ
> るところだったとつぶやいていた。
>  兄もやれやれだが、こっちもやれやれ。
>  上野駅については、昨日行っているので説明は省略。そして、次は、下車駅の鶯
> 谷駅。
>  なお、確認の意味も含めて、下車する前に、ウグイスの声について説明をしてお
> いた。
>  鶯谷駅に着いたのは、8字を少し過ぎたくらいで、朝飯にはちょうどいい時間だ
> 。
>  この鶯谷駅は、山手線所属の駅の中で、最も1日あたりの乗客数が少ない駅であ
> る
> 。そういうことで、東京駅や、新宿駅のような人のざわつきはない。私たちは、ホ
> ームのイスに座り、ウグイスの泣き声に耳を澄ませながら、落ち着いて朝飯を食べ
> るほとができた。
>  ところがである。食べ終わるころに、突然兄から、心をざわつかせる質問が飛び
> 出した。
>  「この辺に、見学する所はないのか」。
>  確かにこの辺には、入谷鬼子母神下谷七福神横山大観記念館、樋口一葉記念
> 館などの観光スポットがある。だが、それを言うと、兄のことだ、写真をとるため
> 、「行こう」と言い出すに違いない。それで、説明にはわざと加えなかったのだが
> 、早くもカメラ、記念物オタクの血が騒いできたようだ。
>  そして、突然の質問に、まごまごしている私を見て、オタクとしての直感が走っ
> たのか、さらに追求の言葉を発する。
>  「あるのなら教えてくれよ」。
>  これに対して私は、とっさの判断で、鶯谷駅の、もう一つの顔について口を開い
> た
> 。
>  「あるにはあるが、ラブホテルとか、ストリップ劇場とか…」。
>  そこで兄は、「あっ、わかった。もういい」と話を切った。
>  小さな子供の前で、そんな話をされるのはまずいと思ったわけで、危うく難を逃
> れた私だった。
>  やれやれ。
>  この大人の駆け引きを知ってか知らずか。てっちゃんは、終始だまっていた。
>  鶯谷駅を出たのは8字半ごろで、次の下車駅の駒込駅までは、また私が仕切って
> 鉄道ガイドを務める。
>  日暮里駅については、その住所は日暮里ではなく、西日暮里であること。駅北側
> は
> 、7伏線が並ぶ、日本最多の併走区間であることを告げる。
>  本音を言えば、鉄道オタクの私としては、ここで下車して、跨線橋からその雄姿
> を見物させたいところだが、それはちと、マニアックで、兄から文句がでそうなの
> でやめた。
>  ただ、その代わりに、車内からそれを見学できるよう、意図的に、駅北側に停車
> する車両に乗り込ませた。
>  てっちゃんは、あたりを見回していたようだが…。はたして興味を持ってくれた
> のか…。
>  西日暮里駅については、
>  山手線で唯一駅名に方角がついている駅であること。住所は、そのまま西日暮里
> であること。
>  を、ガイドしたかったのだが、
>  西日暮里駅に行く時に、車内放送で流れた、「舎人らいなー」について、それは
> 舎人親王と関係あるのか。なにか撮影スポットがあるのかと、ガイドする前に質問
> され
> 、その説明ができなかった。
>  やれやれ。
>  実際、舎人親王の観光スポットについては、よくわからなかったのでうまくかわ
> し
> 、田端駅については、仕切りなおしでガイドする。
>  JR東海には、文字は違うが読み方同じの田畑という駅があること。上から読んで
> も下から読んでも同じであること。ここから京浜東北線と山手線が分離することを
> 告げた。
>  西日暮里駅のガイドができなかった分、ちと熱が入ってしまったが、てっちゃん
> は興味を持って聞いてくれた様子。
>  しめしめ。
>  しかし、兄は聞き流している様子。
>  やれやれ。
>  次の駒込駅では、下車するのだが、その前に、兄に、こちらのホームでは、4月
> 下旬から5月上旬ごろにホームに植えられたつつじが咲くので、今度写真をとって
> 送ろうかと、きげんをとっておいた。
>  駒込駅での目的は、昨日話した、「さくら、さくら」の発車メロディーを聞くこ
> とだ。なにぶん電子音で、テンポもちと早いので、2階聞いてまたすぐ乗車する。
>  次の巣鴨駅は、下車して外に出る。兄のお待ちかねの、洗い観音、およびとげ抜
> き地蔵の見学だ。
>  巣鴨駅を出たのは、9時を少し回ったころで、仏像の見学だけでなく、周辺の地
> 蔵どおり商店街もぶらついた。兄が、熱心に写真をとって楽しんだことはいうまで
> もない。
>  巣鴨駅にもどったのは、11時ごろで、次の下車駅は高田馬場駅。今度は、てっち
> ゃんお待ちかねの、手塚キャラクターの壁画の見学だ。
>  なお、その間の駅ガイドは、させてもらう。
>  大塚駅については、路面電車が走っているが、東京都が運営していること。これ
> にたいし、大阪の路面電車阪堺電車は私鉄であること。
>  池袋駅については、近々、新型の路面電車を走らせる計画があること。
>  目白駅については、日本で最初の橋上駅舎であることのみ説明した。もし、この
> 駅の改札がステンドガラスであることを知らせたら、兄のことだ、写真をとるから
> 下車しようといいかねない。
>  そして、高田馬場駅にて下車する。あのアトムノ発車メロディが、私たちを歓迎
> するかのように鳴り響いた。
>  ここで、ちょっとお腹がすいたので、アトムノメロディをききながら、巣鴨で、
> つい買ってしまった、おかしを食べる。そして、改札を出てすぐの、手塚キャラク
> ターの壁画へと向う。
>  壁画は、高架下の壁に大きく描かれ、なかなか見ごたえのあるものだ。その壁画
> をバックに、二人の写真を私がとった。そして、その後、今度は私が壁画をバック
> に、高田馬場とアトムについてのガイドをする。
>  ここには、手塚プロダクションがあること。原作では、アトムの保護者である、
> お茶の水博士は、科学省の長官であり、その科学省は、この高田馬場にあるという
> 設定になっていること。それに町おこしが加わって壁画ができたということだ。
>  また、お茶の水博士の名前の由来は、JR中央線御茶ノ水駅からきていることも
> 付け加えた。
>  すると、てっちゃんから、「御茶ノ水駅にも壁画があるの」と質問された。
>  残念ながら、そこまて調べきれていなかったので、答えることができなかったが
> 、鉄道マニアの私をうならせるとは。やはりてっちゃんにはマニアとしての才能が
> あるかも。
>  しめしめ。
>  さて、用事もすんで、駅へと向おうとしたその時、てっちゃんが、「あっ、眼の
> 不自由な人がいる」と、駅から出てきた白い杖を持った人を見つけた。
>  場所はよくわからないが、この近くに、日本点字図書館という施設があることを
> 教えると、「行って見たい」と言い出した。
>  おお、てっちゃんには、ボランティアの素質もあるのかと思いきや、そうではな
> かった。てっちゃんの好きなゲーム、「ポケモン」の中に、点字を、暗号として使
> っているものがあり、それで興味をしめしたのであった。
>  しかし、きっかけはどうあれ、ボランティアに関係することに興味を持つのはい
> いことではないか。叔父としては、社会見学をさしてやりたいところだが、点字
> 書館の場所がわからない。
>  だが、その時、兄がその眼の不自由な人のところにかけより、点字図書館への道
> 筋をきいた。偶然、その日とも、点字図書館に行くところだった。それで、われわ
> れ健常者3人は、めの不自由な人に誘導されるという不思議な体験をしながら、点
> 字図書館にたどり着いたのであった。
>  点字図書館は、通常、日曜日は休みだが、その日はたまたまイベントがあり、開
> 館していた。イベントということで眼の見える日とも多数きており、私たちは点字
> の図書室や目の不自由な人のための便利グッズを見学した。また、健常者も買って
> いいということだったので、父親は、息子に、点字の着いたトランプと、片面に渦
> 巻き状の突起の付いたオセロゲームを買ってやった。
>  うーん、あの声賭けといい、グッズの購入といい、子を思う父親ならではの対応
> と思った。
>  予定外の見学で、高田馬場駅を出た時には、すでに12時を過ぎていた。そして、
> 次駅の新大久保駅に下車する。改札を出た所が、大久保通りと言って、アジア系の
> 店が並ぶ通りだ。 
>  予定では、少しぶらついて、食事を取る店を決めようかと思ったが、高田馬場駅
> で時間をくったので、他ではなかなか無いであろう、モンゴル料理の店を見つける
> とすぐに入った。モンゴル料理というと、すぐに思いつくのが羊の料理で、3人と
> も羊の焼肉の料理をたのんた。
>  私の計画では、この後渋谷駅に行き、忠犬ハチ公の像を見学し、記念写真をとっ
> て終了の予定だった。だが、事態は、兄の一言から、思わぬ方向へと進んでしまう
> のだった。