如月 文実(きさらぎ ふみじつ)です。事件簿その1 2作品を投稿いたします。

わ わが、四コマ物語ワールドにようこそ。作家としての人格、如月 文実(きさら
ぎ ふみじつ)です。
 今回の四コマ物語は、以下の2作品です。

事件簿
如月文実
 この四コマ物語は、報道された事件等を元に作っています。ただし、これはあくま
で小説であって、登場人物は別名です。また内容も、実際の事件とは少し違います。

SOS
 (1) あたりが薄暗くなってきた。「しまった、頂上でのんびりしすぎた」。早
夫は急ぎ足で山道を下る。霧が出てきた、遠くが見えにくくなる。気持ちはあせる。
だが、行けども行けども山道は続く。「あれっ、おかしいな」と思ったやさき、早夫
は、山道から広い原っぱに出た。あたりはすっかり暗くなり、人の声も気配もない。
「しまった、道をまちがえた」。行き場を見失った早夫は、その場に立ち止まり、「
おーい、誰か助けてくれ」と大声を張り上げた。だが、返事はない。早夫はあきらめ
、下に下りる道を探そうと考えた。が、その時突然、早夫は、柳沢きみお作『女だら
け』という漫画で、嵐山先生が「雪山で遭難した時は、チョロチョロ動くと体力を消
耗し、かえって危険である。こういう時は、雪洞を掘って助けがくるのを待った方が
いい」と言ったのを思い出した。ここは雪山ではないが、あたりは暗く霧も出ている
。ここでヘタに動けば、かえって山の奥深くに迷い込み、よけいに遭難してしまうか
もしれない。そう考え直した早夫は、今日はひとまず、ここで野宿することにした。
そして、アニメ『ド根性ガエル』で、エレベーターの中に閉じ込められたひろしとピ
ョン吉が、偶然ポケットに入っていた1枚のビスケットを何枚にも割って食料にした
ように、1枚の板チョコを、一かけら割り、晩飯代わりに口に入れた。それから、本
宮ひろし作『おおぼら一代』という漫画の中で、無人島に遭難した原太郎がそうした
ように、木の葉を集め、それをふとん代わりにして寝た。
 (2) 翌朝、朝飯代わりにチョコレート一かけらと、たまたま近くを流れていた
わき水を口にした早夫は、リュックから小型テープレコーダーを取り出した。肉声で
、「助けてくれ」と大声を張り上げると体力を消耗する。そこで、声を録音し、新聞
紙をまるめて作ったメガホンを通して、助けを呼ぶことにしたのである。テープには
、アニメ『超時空要塞マクロス』の歌が入っていたが、消すのはもったいないので、
テープの終わりの余白部分に録音することにした。そして、15分くらいの間隔で声を
流した。だが、やはり返事はない。そのうち太陽は空の真ん中にきた。早夫はまた、
昼飯代わりにチョコの一かけらとわき水を口にした。そして、この先どうするかを考
えた。このままここにとどまって、助けがくるのを待つか。だが、それではラチがあ
かない。ではここを出て、自力で下に降りる道を探すか。でもそれは怖い。考えはま
とまらない。早夫は、気分を変えるため、あたりを見渡した。原っぱには所々に枯木
が倒れており、それがちょうど、アルファベットの「O」の形に組み重なっていた。
そしてそれに気づいた瞬間、早夫の心は決まった。手塚治虫作『鉄腕アトム』に、月
で遭難したアトムが、月の赤い木を使って、「SOS」の文字を作り、地球に助けを
求めたという話がある。そして今、うまい具合に、SOSの「O」という形に組み重な
っている枯木があり、その両側には、これまたうまい具合に、少し位置を変えれば、
「S」という文字になる枯木がある。早夫はさっそく、アトムがしたようにSOSの
文字の作成に取りかかった。そして、偶然通りかかった飛行機が、SOSの文字を発
見し、アトムのように、劇的に救助されることを心に描いた。



 (3) しかし、頭の中では簡単だと思っていた作業も、昨日の夜からろくな物を
食べていない体にとって、重労働であった。結局作業は、空の色がオレンジ色に変わ
るまでかかった。完成した後、早夫はSOSの文字のそばに横たわり、体を休めた。
そして休んだ後の夕飯には、チョコレートのかけらを三つ食べることにした。と、そ
の時、森の中から何やら黒い影がこちらに近づいてくるのが目に写った。「もう助け
が来てくれたのか」。早夫は喜んで飛び起き、目をこらした。だが、その影は人では
なく熊であった。熊はドンドン近づいてきた。熊はもちろん、童謡『森の熊さん』の
ごとく「お逃げなさい」と告げに来たわけではない。やつは自分を襲いに来たのだ。
早夫は熊から逃げるために走った。だが、体力の消耗しきっている早夫が逃げおおせ
るわけがない。一瞬、アニメ『タイガーマスク』で、雪山で必殺技をあみだすため、
特訓していた伊達直人が、たまたまでくわした熊を相手に、ウルトラタイガードロッ
プを完成させる場面が頭をよぎった。だが自分は伊達直人ではない。そんなことがで
きるわけがない。結局早夫は、アニメ『きんにくマン』でウオーズマンと対戦したペ
ンタゴンのごとく、ベアークローのえじきとなってしまった。早夫は、嵐山先生を恨
んだ。
 (4) それから数年後、ある飛行機がSOSの文字を発見し、捜索が開始された
。早夫の願いはかなえられた。だが、発見されたのは、早夫の遺品と遺骨の一部であ
った。早夫の願いはかなえられなかった。事件を報道した白髪混じりのニュースキャ
スターは、「なぜ誰もいないのに、テープに『助けてくれ』と録音したのだろうか」
、「なぜ、SOSの文字を作る体力があるのなら、それを下山するために使わなかっ
たのだろうか」、「理解に苦しむ」、「謎の多い遭難事件だ」と、口をそろえて解説
した。だが心の中では、「アニメファンだから、こんなバカなことをするのだ」と、
嘲笑っているのが、あの世にいる早夫にはわかった。「これは謎でも理解できないこ
とでもない。アニメファンの気持ちになれば、わかることだ。それが、お前たちにわ
からないのは、アニメファンがバカだという固定観念を持っているからだ。そのため
に、お前たちの推理力が遭難しているからだ」。早夫は、あの世からこう叫んだ。

果物ナイフ
 (1) 職員朝礼が始まる前に、細川教諭はいつも、果物を食べる。食べる果物は
いつも、リンゴやカキなど、手では皮のむけない物ばかりだった。細川教諭が、そう
いう果物だけを食べるのにはわけがあった。そういう果物でないと、いつも果物ナイ
フを持ち歩くことができないからだ。
 (2) 同僚の教師が、顔にあざを作って職員室に帰ってきた。あの不良グループ
にやられたのだ。やつらは教師に暴力を振るう、学校のやっかいものだ。しかも、体
育系の教師には手を出さず、決まって、細川のような、文系のひ弱そうな教師ばかり
を狙う。学校内では、教師は生徒よりも権力を持っている。しかし、中学生ともなる
と、教師より生徒の方が、拳力は上だ。しかも、学校外ともなると、教師の立場は非
常に弱い。たとえば、たとえ、生徒の方が悪くとも、暴力を振るえばPTAに責めら
れる。校内暴力で、生徒が先生を殴ったとしても、生徒はそんなに責められない。し
かし、先生が生徒を殴ったりすれば、教師はマスコミの袋叩きとなる。ひ弱な教師で
ある細川にとっては、生徒の暴力からも、PTAやマスコミからの暴力からも、いか
にして自分の身を守るかが、重要な課題であった。



 (3) 通勤途中の路上で、細川は、バッタリ、不良グループの生徒たちと出会い
、うっかり目線があってしまった。細川はすぐに目線をそらし、何もなかったかのよ
うに歩いた。しかし、それがかえって、彼らの反発を買ってしまった。彼らは細川を
取り囲み、因縁をつけた。うち一人が、細川の衿首をつかんだ。「このままでは殴ら
れる。痛いのはいやだ! 怖い…」。1発のパンチに対する恐怖が、細川の体をかけ
めぐった。そして、防衛本能のおもむくままに、右手をポケットに入れた。次の瞬間
、衿首をつかんでいた生徒が、血を流して倒れた。細川の右手には、血の付いた果物
ナイフがあった。細川は呆然と突っ立っていた。やがて誰が呼んだのか、救急車のサ
イレンがきこえてきた。こうして細川は当面の暴力の恐怖から逃れることができた。



 (4) 刺された生徒は、病院で治療を受けた。命に別条はなかった。刺した細川
は、警察の取調室にいた。警官は、なぜ果物ナイフを持ち歩いていたのかと問い詰め
た。これに対し細川は、「自分は職員朝礼の前に、いつも果物を食べる。このナイフ
は、その皮をむくための物だった」と主張した。
ーーー 四コマ物語 説明
四コマ物語とは
 (1) 四コマ物語とは、私、如月文実(きさらぎ ふみじつ)が新たに開発した
文学形態(?)です。
 (2) 四コマ物語は、起承転落の4小節からなる小説です。
 (3) 題材は、日常生活のできごと・道端で転がっているような話・スポ−ツ・
社会風刺・おとぎ話・パロディ−などさまざまです。
 (4) みなさんも挑戦してみませんか。そして、001、002と、ネットの中に四コ
マ物語ワールドを作ってみませんか。

 特徴、可能性
 (1) 文が短く、読みやすい・読むのにつらくない。
 (2) その中にもジャンルがいろいろある。
(3) ジャンルの中でもバカバカしいのからシビヤーなものまで、バライティー
にとむ。
 (4) ジャンルがいろいろあり、この先好きなものだけ拾い読みできる。
 (5) ジャンルがいろいろあり、老若男女はばひろく楽しめる。
 (6) 読者自信が自由に新たな四コマ物語のサイトを作ることも可能。
 (7) この形式に当てはめればだれでも簡単に小節が書ける。
 (8) この形式に当てはめて、既存の小説を四コマ物語にすることができる(要
約四コマ)。
 (9) これを元に短編、長編小説を書くことも可能。 
 (10) (4)[落]を組替えることにより小説を改造できる(陰、陽)。
 (11) 将来、俳句、和歌のように、「四コマ物語集」ができるかも?
 (12) 将来、四コマ物語の大きなネットができるかも?