如月 文実(きさらぎ ふみじつ)です。青春四コマその1 3作品を投稿いたします。

 わが、四コマ物語ワールドにようこそ。作家としての人格、如月 文実(きさらぎ
 ふみじつ)です。
 今回の四コマ物語は、以下の3作品です。
青春4コマ
如月文実
 この四コマ物語は、青春期にあるちょっと屈折した少年を主人公にしています。ち
なみに、少女はでてきません。少女を主人公としたのは、なかなか私には書けません
。女性のみなさん、青春四コマに兆戦を!

選択科目
 (1) 高校2年の春、大学進学希望の賢太は、選択科目を決めなければならない
時期にきていた。賢太は私立の文科系学部を希望しており、受験科目3教科のうち、
必須科目の英語と国語を除く、あと1科目の選択に悩んでいる。第1志望とする大学
の選択科目は日本史、世界史、物理学、それに数学?である。他の大学の選択科目も
、だいたいこれと同じだ。賢太は、好きな世界史を選択しようかなとも思っていた。
 (2) 学校の廊下を歩いていると、向こうから国語の先生が歩いてきた。互いの
目が合ったところで、先生は「選択科目、何にした?」と賢太に尋ねた。「一応、世
界史にしようかなと思っています」と賢太は答えた。すると国語の先生は、真剣みを
帯びた口調で、「世界史より日本史を選択したほうがいいんじゃない?」と賢太に勧
めた。彼女が選択科目に日本史を勧めるには、彼女なりの根拠があった。世界史はそ
れぞれの国の歴史を個別に点として覚えなければならず、したがって覚えるのが困難
だ。これに対し日本史は、日本一国の歴史であり、1本の線としてつながるので覚え
やすい。この意見に、賢太は迷いをしょうじた。
 (3) 数日後賢太は、クラス担任である数学の先生に、選択科目を世界史にする
か日本史にするか相談した。すると担任の先生は、真剣な口調で、賢太に数学を選択
することを勧めた。彼が選択科目に数学を薦める根拠はこうだった。世界史や日本史
は、暗記しなければならない分量が非常に多く、また受験では、重箱の隅をつつくよ
うな細かいところが出題され困難だ。その点数学は、公式さえ覚えれば、あとはそれ
に当てはめればよい。また、たとえ解答が間違っていたとしても、式があっていれば
かなりの点数がとれる。この発言にさらに迷いを深めた賢太は、クラブの顧問を務め
る生物学の先生に、2人の先生のアドバイスのことは言わず、どの科目を選択すべき
か聞いてみた。すると先生は軽い調子で、物理学を選択することを勧めた。彼が選択
科目に物理学を勧める根拠はこうだった。日本史や世界史は覚える分量が多い。数学
と物理学は公式を覚えるという点では同じだが、物理学は数学と違い、生活に密着し
たところがあり覚えやすい。賢太の迷いは頂点にたっした。
 (4) だがその迷いは、あることに気がついた時に一度に吹っ飛んだ。国語の先
生にしろ、数学の先生にしろ、生物学の先生にしろ、勧めた科目は自分が大学受験の
時に選択し、あるいは自分が得意とする科目であった。提示された根拠も、結局はそ
の先生の経験にもとづくものであった。これに気がついた時、賢太はドイツの宰相ビ
スマルクの格言を思い出した。結局賢太は、自分が勉強しやすいという根拠から、世
界史を選択することにした。

テレビ出演
 (1) 今年の夏休み、同じクラスの小林が、自転車で一人北海道一周旅行をした
。それもただ一周しただけでなく、平和に関するキャンペーンも兼ねていたこともあ
り、2学期の初めに、マスコミが学校に取材を申し込んできた。これには、校長先生
は勿論のこと、日頃は生徒だけで遠方へ旅行してはいけないと言っていた担任の先生
や、サイクリングクラブの顧問も舞い上がってしまい、手の平を返したように小林の
したことを絶賛した。しかし、クラスメートの反応は、まるで自分の手柄であるかの
ように絶賛する者、まるで自分が何かの被害を被ったかのように敵視する者、まるっ
きり関心を示さない者の、三つのグループに分かれていた。ちなみに清は、無関心グ
ループの一人だった。
 (2) いよいよ撮影の日がやってきた。授業時間にカメラが回る。ディレクター
は、「いつもと同じ調子でやってください」と言うが、先生も生徒も、同じ調子でや
れるはずがない。授業が終われば、今度はクラブの撮影。その中で、偶然にも清に、
マイクが回ってきた。清は、その時までは、撮影は自分とは無関係だと思っていた。
しかし、マイクとカメラと照明が自分をとり囲んだとたん、自分が1エキストラから
、セリフつきの名脇役として、テレビに出演することを確信した。そしてこの時から
、清は小林の絶賛派に転向した。
 (3) テレビ放映の日がやってきた。放映はニュース番組の特集コーナーとして
、わずか10分たらず。そのうえ清は脇役であるから、映ってもわずか数秒であろう。
しかしそれでも清は、この日のためにわざわざ質の良いDVDを買ってきた。両親も
、近所の人や親戚に、妹はクラスメートや友達に、清のテレビ出演を宣伝しまくった
。そして、いよいよ、放映の時を迎えた。家族全員が緊張の面もちで、くいいるよう
にテレビを見つめる。清は、時折り、ビデオがちゃんと稼動しているかをチェックす
る。脇役である以上、テレビに映るのはほんの数秒。その瞬間を逃してはと、電話も
留守電対応。画面は、授業、クラブ活動、小林の家族の団欒と流れた後、担任の先生
へのインタビューが映った。「もうすぐだ」、家族全員が息を飲む。次にサイクリン
グクラブの顧問、次に別の部員のインタビューと場面が変わり、次には必ず…と家族
全員が思ったその瞬間、突然自転車をこいでいる小林の姿が映った。そしてそのまま
特集コーナーは終わってしまった。なんと清のインタビューはカットされていたのだ
。とたんに家族全員の緊張感は虚脱感に変わった。そして、すかさず妹が、「お兄ち
ゃん、映ってないじゃないの」とくってかかった。とその時、電話のベルが鳴った。
家族全員に嫌な予感が走った。放送はすでに終わり、もうテレビを見つめる必要はな
い。だがいつもなら、ベルが鳴ればすぐ受話器をとりに行く母親も、腰を上げようと
はしない。しかし、ここで出なければ居留守を使ったことになる。母親が受話器をと
ったのは、留守番電話に切り換わる直前であった。そして受話器をとるとすぐ、清を
呼びつけ、何も言わずに受話器を渡し、サッサと奥へ引っこんだ。緊張の面もちで清
は、「はい、代わりました」と口を切る。とたんに、受話器の向こうから、「ニイち
ゃん、テレビ出てなかったじゃないの」と、案の定、抗議の声が聞こえた。それは両
親から清のテレビ出演を聞かされた近所のおばあちゃんであった。清がとりあえず、
事情を説明すると、おばあちゃんは何とか納得してくれた。受話器をおいて奥に引っ
こむと、母親が、「はい、ごくろうさま」とジュースを出した。すかさず父親が、「
今日は電話の応答、全部頼むぞ」と、ポンと肩をたたいた。すかさず妹も、「頼むぞ
」と声をかけた。清は何も言えなかった。それから2度、電話はかかってきた。
 (4) 次の日、自分のクラスでも他のクラスでも、小林はスター扱いであった。
また、サイクリングクラブでは、小林の他にテレビ出演を果たした部員もスター扱い
された。清はカヤの外であった。クラブ終了後、清は、偶然部室内で、小林と二人だ
けになった。その時、清は、小林に、「ちょっとテレビに出たからって、偉そうにす
るなよ」と嫌みを言ってしまった。清は、昨夜から敵対派になっていた。

不良
(1) 桜咲く春の日、ぼくの身体は、真新しい学生服に包まれていた。ぼくも今日
から中学生。学生服はこれまで着ていた私服と違い、何か大人を感じさせるものがあ
る。ぼくがこれからくぐるのは、中学校の門。中に入ってくる人もみんな学生服で、
私服を着ている生徒はいない。門の中には、ぼくと同じように学生服に身を包んだ小
学校の同級生、ぼくらとは、体つきが、ぜんぜん違い学生服もさまになっている先輩
たち。それに、同級生にも、先輩たちにも、小学校の時には見たことのない顔もある
。校舎も、校庭も、教室も、先生も、授業のやり方も、見る人見るものすべてが目新
しく、新鮮な感じがする。そんな中、ぼくは、勉強こそ苦手だが、この3年間中学校
生活を楽しもうと思った。
 (2) そんなぼくが、新鮮でない目新しいものを見つけたのは、入学してから約
1ヶ月後のことだった。授業中に窓から、ふと校庭を見ると、何人かの先輩が校庭で
たむろしていた。聞くところによると、あの人たちは、授業や学校をさぼるのもしょ
っちゅうで、トイレでたばこをふかし、職員室に呼び出されるのもしょっちゅうだそ
うだ。あの人たちは、俗に言う、「不良」である。この前、偶然あの人たちの1人と
廊下ですれちがった。その時は、ものすごく緊張し怖かった。放課後、ぼくは気のあ
った友達と、「ぼくたちは、ああいうふうにはならないぞ」と誓いあった。
 (3) そんなおれが不良になったのは、中学2年の時。ちょうど高校進学につい
て真剣に考える時期に入ったころだった。それまでは、学校の成績など、ぜんぜん気
にしていなかったが、クラスのあちこちで進学のことが話題になってからは、それが
やたらとプレッシャーとなってきた。先生の話はさっぱり分からず、教室内では、自
分だけが見えないバリヤーで隔離されている感じ。それに勉強のことでヘマをやらか
すと、先公の野郎、「そんなことで高校へ行けるのか」と、おれをバカにしやがる。
高校なんて、選り好みさえしなけりゃ入れるもんだ。去年だって定員割れした高校が
いくつかある。まあ、とにかく友達にはあえるので、学校には行く。しかし授業は息
苦しくて窒息しそうで行く気はしない。だから校庭で気のあった友達とたむろする。
たまには学校で待ち合わせた後、近くの茶店に乱入する。新入生のガキどもが、窓か
らおれたちを覗き見してやがる。おまえらも、あと1、2年すれば、おれたちの気持
ちがわかる。
 (4) そんな学生生活を送った私も、今はごく普通のしがないサラリーマン。会
社でも、家庭でも、ヘーコラヘーコラして生きている。今となっては、あの学生時代
がとてもなつかしい。来年はうちの息子も中学生となるが、息子にはまじめにやって
欲しいと思うのは、私のエゴだろうか。

ーーー 四コマ物語 説明

四コマ物語とは
 (1) 四コマ物語とは、私、如月文実(きさらぎ ふみじつ)が新たに開発した
文学形態(?)です。
 (2) 四コマ物語は、起承転落の4小節からなる小説です。
 (3) 題材は、日常生活のできごと・道端で転がっているような話・スポ−ツ・
社会風刺・おとぎ話・パロディ−などさまざまです。
 (4) みなさんも挑戦してみませんか。そして、001、002と、ネットの中に四コ
マ物語ワールドを作ってみませんか。

 特徴、可能性
 (1) 文が短く、読みやすい・読むのにつらくない。
 (2) その中にもジャンルがいろいろある。
(3) ジャンルの中でもバカバカしいのからシビヤーなものまで、バライティー
にとむ。
 (4) ジャンルがいろいろあり、この先好きなものだけ拾い読みできる。
 (5) ジャンルがいろいろあり、老若男女はばひろく楽しめる。
 (6) 読者自信が自由に新たな四コマ物語のサイトを作ることも可能。
 (7) この形式に当てはめればだれでも簡単に小節が書ける。
 (8) この形式に当てはめて、既存の小説を四コマ物語にすることができる(要
約四コマ)。
 (9) これを元に短編、長編小説を書くことも可能。 
 (10) (4)[落]を組替えることにより小説を改造できる(陰、陽)。
 (11) 将来、俳句、和歌のように、「四コマ物語集」ができるかも?
 (12) 将来、四コマ物語の大きなネットができるかも?